「観空の形」から学んだ、敵は真正面

 今回の国際沖縄空手道無想会主催の、ネット上での直弟子稽古会では、非常に良い質問が多く出て、その内の一つを前回のブログで紹介しました。

 今回は、もう一つの質問と、その答えを記します。

 それは、「江南(チャンナン)の形」に関してです。

 近代を迎えた琉球国は、明治維新を行った当時の日本国内以上の混乱が生じました。その最たるものが、いわゆる「琉球処分」と言う名の、日本政府下へ組み込まれることでした。

 その時期に「近代空手の父」としても良い、糸洲安恒師は当時の「手」、「唐手」、または「沖縄手」などと呼ばれていた沖縄独自の武術を、学校教育制度の中に組み入れようとしました。

 その辺の経緯は、YouTube上のMuso-kai Channelに詳しく述べていますので、ご興味がありましたらご覧ください。好評価・チャンネル登録も宜しく(っと、チャッカリ宣伝!)。

https://www.youtube.com/watch?v=2GyZFmbIyPg&t=44s

 その時に糸洲師は、空手を体育・体操化するために変革します。

 いま日本本土で遣られている空手は、この体育・体操化の空手です。

 ここは、決して間違わないようにしてください。

 さらに空手の本場であるとされる、沖縄で遣られている空手もこの糸洲師の影響下にある、体育・体操化の空手です。

 ここも、チャンと認識しておいてください。なぜなら肝心の沖縄の空手家が、この歴史的推移を、都合よく忘却してしまっているからです。

 さて、この糸洲師は平安(ピンアン・ヘイアン)の形を、五つ創作します。平安初段・二段・三段・四段、そして五段と呼ばれる形です。

 この形、体育・体操用に創作されているので、武術的に相手を倒す危険な業・技は、意図的(?)に排除されているために、武術的にはナンの意味の無いものです。

 この形をそのまま、自分を攻撃してくる相手が居ると想定して、自分がその相手を倒すなどという想定で練習してしまうと、それこそ大変なことになってしまいます。

 それこそ誤解・曲解。そして、辻褄合わせの、オンパレードとなってしまうのです。まぁ~、それが、現代の空手の形の解釈ですが・・・。

 この平安の形には、チャンナンと呼ばれる形が元にあり、それを平安が上書きしてしまったので、そのチャンナンの形は喪失してしまったようです。

 私・新垣清は、自らの修行のために、かつ国際沖縄空手道無想会の会員諸氏(直弟子)のために、このチャンナンを再構築して、伝承しています。

 なぜか?

 それは、古伝の武術として伝承された沖縄空手の形と、現代の平安の形の間には、深い溝があり、もう武術的には、ゼンゼン共通の基盤に立つことが不可能だからです。

 その橋渡し役を果たす目的で、「チャンナン(江南の漢字だと思っています」の形を、私・新垣清の責任で創作しました。

 このチャンナン(いわゆる平安の初段から五段)には、クーシャンクー(公総管)の形の影響が大きいと言われており、確かにクーシャンクーを武術的に解明していくと、平安初段や五段などにはそれと、まったく動きが出てきます。

 そして、私がクーシャンクーを完全解明を果した時に、「ハタッ!」と気づいたことがあります。

 それはクーシャンクーと呼ばれようが、「観空」と呼ばれる形であろうが、あの形の初動は、自分の真正面に居る人物(いわゆる、敵ね!)からの、攻撃に対処するものでしかない! 

っという事です。

 これには、困りました! 

 イヤーッ、ホント往生しました!

 だって、所謂「北谷屋良(チャタンヤラ)・クーシャンクー」と呼ばれる形は、一応、相手が前に居るようだけど・・・。

 「糸洲系統のクーシャンクー」や、その影響下にある「観空」と呼ばれる形。そして、それを元として創作された・・・。

 平安初段(松濤館・極真会館系統の二段ね!)と、平安四段は、明らかに自分の横(この場合は左側)から攻撃してくる相手への、対応技となっているからです。

 あれらの解釈は全て間違いであり、その間違いによって生じた、「後屈立ち」、そして、「猫足立ち」も、全て誤解・曲解、さらに辻褄合わせの産物でしかありません。

 すると、平安の形から原型とされる「江南(チャンナン)の形」を復元していき、武術として伝承された沖縄空手と、現代の体育・体操化された空手を対比する。っという壮大な目論見で、「江南の形」を創作した、私の目論見がまったくオジャンとなってしまいます。

これでは・・・

 「武術としての沖縄空手の再興??? ハッ・ハッ・ハッ!(笑・笑)!!!」

 自分の闘う相手(すなわち敵)が、何処にいるかもワカラン形を修行していて、

「ナニが、武道だ!?」。

「ナニが、武術だ!?」

 っと言われても、私としては、返す言葉が無いのです。

 それこそ、「ヘソが茶を沸かす!」っと謗られても、赤面して顔を背ける以外にないのです。

 でも、キツイけれど・・・。自分の修行で得た回答です。

 ここで頬被りをしては、一体今までの自分の修行はナンだったのか? っと、自問する羽目になってしまいます。

 それは、断じて、できません!

 今回のネット上での直弟子稽古では、この苦い想いを胸に、敵は、自分の真正面! 

っということを詳しく説明しつつ、「江南(チャンナン)の形」を伝授しました。

 この稿、続く。

国際沖縄空手道 無想会 International Okinawa Karate-do Muso-kai