今、よみがえる! 武術としての「ごじゅうしほ」の形

 本ブログは、前回の極真空手の「スーシホ」と、「ウセーシ」の形からの続きです。

 各個人、各流会派によって、千差万別の有様を見せる「ごじゅうしほ(五十四歩)」の形ですが・・・。

 国際沖縄空手道・無想会の、世界総本部道場において、形の解明の相方を務めてくれる正指導員のR・S四段との稽古で、ドウにか・コウにかその大要までこぎ着けたのですが。

 その際に、初動を解明したことが、非常に大きかったのです。ってか、それが解明できなければ前に進めません。

 だって・・・、最初に「どうするの?」っということが分からなかった場合には、ニッチもサッチも行きませんからね!?

 ちょっと技術的に説明すると・・・、最初の動きによって、我彼の相対関係が明確になるのです。そして、形に存在する「コンテクスト」によって、前後の業・技の存在が理解できるからです。

 しかし、この形に存在する「コンテクスト」に沿って、「ごじゅうしほ(五十四歩)」の形を解明しようとすると、初動の次に表れてくる、左右の動作がオカシイのです。

 さらに厄介なことに、他の部分は各個人、各流会派によって千差万別の趣きを見せるこの形が、この部分だけは全て同じ有様で行われているのですよ。

 「この部分は、絶対にこうなるべきだ!」、「この部分は、絶対にこう為らなけばならない!」っと、わたくしは99パーセント、いや100パーセントの確信を持っていました。

 しかしエビデンス、すなわち証拠が見つかりません。

 前のブログで載せたお知らせ・その2の記事の中の動画を参照しても、すべての流会派の形が、わたくしにとって「絶対にこうなるべきだ!」っとなる動作には、なっていないのです。

 さらに困ったことに、相方を務めてくれるR・S四段は「シハン、おっしゃることは尤もですが・・・証拠が無いです」っと、自らの矜持にかけて譲りません。

 彼も形を作るな!っという心情と決意で、わたくしの相方を務めてつとめてくれているのです。

 その稽古の中で、近代になって創作された形が、「武術的には、まるで意味を為さない」っということは、知り尽くしています。

 さらに、「一子相伝」っと言われる流会派の歴史や形も、近年における創作である! っとそれこそ骨身に染みて、理解している人間です。さらにある意味、辟易もしています。

 ですから、この場面では一歩も譲ってくれません(弟子なんだけどねぇ~、困るんだよね。コンなの!)。

 ンンーッ! 困った! 困った!っと時間だけが経って行きます。

 時々、相方との朝から午後に掛けての稽古で、R・S四段の機嫌の良さそうな時を見計らって・・・。

「じつはぁ~、ここの部分の動作は、こんな風(ふう)になるはずだから、それで良いじゃない!?」っと、自分が正しいと思っている動作を見せます。

 一応わたくしシハンで、お師匠さんなんですけどね・・・。生徒のご機嫌を取るなんって・・・。

 っが・・・、妥協してくれません。

 R・S四段は、首を縦に振らないのです。

 「シハンの動作は、正しい。とわたしも思います。しかし、証拠が無ければ、他の創作形と同じレベルにしかなり得ません(っとキッパリ!)」

 ナンだ、カンだ。っで二週間ほどそのままの状態で・・・。

 稽古でも、このままでは「ごじゅしほ(五十四歩)」の形も、前回やった「クーシャンク―(公総菅)」っと同じく、不完全なままの解明で終わってしまう。っと悲観的な空気が流れていきます。 

 しかし、わたくし諦めません! 

 R・S四段に矜持があるように、わたくしにも、ここまでやってきた意地があります。

 そしてもう一度、手に入る全ての書物・動画で「ごじゅうしほ」、「五十四歩」、「ウセーシ」っと呼ばれる形を、検証しました。

 でも・・・、ダメでした!

 しかし・・・、一つだけ抜けている動画がありました。

 それが、あの極真空手の「スーシホ」の形の動画だったのです。

 極真空手の「スーシホ≒ごじゅうしほ」や、「観空≒クーシャンクー」は、他の流会派とはその形態や動作が非常に異なるために、常に検証の際に盲点として抜けてしまうのです。

 そのために初動の業・技で参照にしたのに、またこの形の存在を忘却してしまっていたのです。

 そして・・・。あったのです!

 

 わたくしが、「この部分では、絶対にこうなるべきだ!」っと言っていた箇所で、かくなるべく動く、業・技として、存在していたのです。

 これには、驚きました!

 欣喜雀々(そして恐る恐る)として、稽古の始めにR・S四段にその動画を見せます。

 すると「アッ! これで、OKですね」っとナンか素っ気ない返事!

 じつは彼もその部分では、わたくしの言う動作が正しいということなのです。

 でもエビデンスが無い場合には、絶対に譲ってはいけない。それが、自分の相方としての務めである! っとの心情で、譲っていないだけです。

 そのために、エビデンス・証拠があればOKよっ! っということで・・・。

「ジャ・ジャ・ジャ・ジャ~ンと、かくの如く運命はドアを叩く!」っというクライマックスを期待していた、わたくしの思惑とは違って・・・。

 呆気なく、「ごじゅうしほ(五十四歩)」の形の、完全解明は終了しました。

 武術として伝承された沖縄空手の形の「構造・機能・様式・応用」っと、形に存在する「コンテクスト」にそって、完璧なカタチの武術の形として「純化」された、「ごじゅうしほ(五十四歩)」の形が、今、よみがえった! のです。