元の位置に戻るナイファンチ

 ナイファンチ、ナイハンチ、そして鉄騎と呼ばれる形は、元の位置に、もどりません。

 さらに、武術的心身思想を完全に無視されて、大鉈で無造作に三つにぶった切られてしまっています。

 そのために、元の位置には戻らない以外にも・・・。初段は左右対称ですが、二段、三段はゼンゼン対称になっていません。特に、三段は酷いです。

 だからダーレもやりませんし、遣る価値は無いと思われており・・・。あながち、その考えは間違っていないはずです。(文責・新垣清)

 ではナゼ、元に戻らないのか?

 移動する足を、前に交差させているだけだからです。ですから・・・、形の中の移動の際に、足の交差を続ければ続けるほどに、前方へ前方へと進んで行かざるならないのです。

 では、戻るためには、ナニが必要か?

移動する足の何れかを、後ろに交差しなければなりません。

 小学校三年生でさえ、分かる道理です。っが・・・。

 わたくし、この答えを見つけ出すために、必死の想いをしました。

 さらに、それを国際沖縄空手道・無想会の世界総本部道場の弟子たちに、伝える時にも、脂汗が出る思いがしました。

 だって・・・。この150年ほどの近代の空手家、そして空手の練習(修行ではありません)において、ナイファンチの移動する足が、後ろで交差するなどということは、見たことも聞いたことも無いからです。ってか・・・、そう思った人間さえも、一人も居ないはずです!

 じつは・・・。

 この後ろで交差ということに関して・・・。正直に記すと・・・。

 わたくしの再修業の果てに、ナイファンチの形の脈絡・コンテキストの存在を理解した時に、主に相手との相対関係において、後ろ交差の必要性・必然性を確信したのであって・・・。

 別に、武術的に伝承された沖縄空手の形が、「元の位置に戻るために、必要だからだ!」 

っという気持ちで、行った訳ではないのです。

 しかし・・・問題が起こりました。それは上記の、脂汗の原因となったものです・・・。

 それは、もし、わたくしの、この後ろ交差の理念と、動作(業・技)が間違いであった場合です。

 さらに、それを、世界総本部道場の弟子たちに伝授し・・・。かつ、普及活動を行っている日本国内の弟子たちに伝授して・・・。

 まったくの、間違いであったならば・・・。

 わたく・新垣清は、この150年の近代における空手の歴史において、ただ一人、そのような馬鹿ゲタことを思い付いた人間として、記録に残ることとなります。

 まぁ~、わたくし如き武才無き者の間違い、勘違いは、赤っ恥は掻くものの、自己責任で済むとしても・・・。

 それを伝授されて、一所懸命に修行する世界総本部道場の弟子たち、さらに日本国内の弟子たちの立場を想うに・・・。冷や汗、脂汗以上の想いがありました。